1つは「七・六早稲田カウンター学生弾圧事件について」である。これは昨年7月、早稲田大学の1年生で、りべるたんの運営員であるA君が、ヘイトスピーチデモへのカウンター抗議の最中逮捕されてしまう事件があった。私は縁あって、A君の救援会の責任者として活動した。本稿はこの事件の総括録である。
下地には、昨年10月、早稲田大学で開催した共同シンポジウム「早稲田からヘイトスピーチを考える」での報告がある。同シンポの2部において、私は「7.6事件の経過報告と会計報告」と題し、一連の出来事を「ヘイトデモ主催者の主張」「被害男性の実像」「公安当局の思惑」「救援の方針と展開」などの観点から振り返った。これらの発言を文章へ置き換えたものが拙稿と言える。
また、1部の安田さんの講演「ヘイトスピーチとはなにか」も、「ヘイトスピーチの正体」と改題の上、文字起こしされている。以前、週刊誌の事件記者をしていた安田さんは、日本へ出稼ぎに来ている中国やブラジルからの移住労働者の取材をきっかけにヘイトスピーチ問題と出会い、関心を深めていったという。そして安田さんは、近年在特会らがネットを駆使して先導する「新しい差別運動」の以前から、日本社会には朝鮮半島出身者への根深い差別(意識)が存在していたと指摘する。私は当日、壇上のすぐ脇で聞いていたのだけれど、安田さん独特の間と勢いのある語り口も相まって、非常に引き込まれた。
弁護士の酒田芳人さんや憂国我道会の山口祐二郎さんらが登壇した3部の共同討議も、当初誌面へ再現される予定だったが、結局、情況編集部の判断で掲載へと至らなかった。議論が盛り上がっていただけに、残念だ。
2つ目の文章は「法大闘争史概略」である。新左翼界隈の方はご存知の通り(?)、法政大学では、2006年から今日に至るまで、学生の政治的表現の自由を巡って述べ126名の逮捕者・34名の起訴者が生まれている。リベラルの仮面をかぶった監獄大学、それが法大だ。
この学生側と大学側の激しい対立は一般に「法大闘争」と呼称され、法政大学文化連盟という団体が運動を牽引している。私は昔、同団体の執行委員を務め、多くの仲間と同様、留置場や東京拘置所へぶち込まれた。引退後も長らく、裁判闘争に明け暮れた。昨年2月、4年半の裁判生活を経て無罪判決が確定した後、私はこの間自分がやってきたことを総括しなければならないとの念に駆られ、法大への卒業論文のつもりで、本稿を執筆した。注も参考文献も付けていないが、2万字以上は書いたのではないかと思う。
この学生側と大学側の激しい対立は一般に「法大闘争」と呼称され、法政大学文化連盟という団体が運動を牽引している。私は昔、同団体の執行委員を務め、多くの仲間と同様、留置場や東京拘置所へぶち込まれた。引退後も長らく、裁判闘争に明け暮れた。昨年2月、4年半の裁判生活を経て無罪判決が確定した後、私はこの間自分がやってきたことを総括しなければならないとの念に駆られ、法大への卒業論文のつもりで、本稿を執筆した。注も参考文献も付けていないが、2万字以上は書いたのではないかと思う。
執筆にあたっては、次のような問題意識があった。すなわち、この間の異常事態にもかかわらず(公安警察が跳梁し、100名もの逮捕者が出ている研究教育機関は異常だ)、何が起きているのか、何故こんなにこじれたのか、運動の流れや経緯を通観するような論考がほとんど表に出ていないのは問題である、と。もちろん、私を含めて運動の当事者は、日常のビラや裁判の意見陳述など、それぞれの機会に、それぞれの立場で分析を行っているのだが、いくつかの例外を除いて、そういったものがまとまったテキストとして参照可能になっているとは言えない。私としては、90年代半ばに始まった自治会の非公認化、学生会館学生連盟の非公認化、「法大の貧乏臭さを守る会」の運動、9・21ボアソテロ、学生会館の解体、3・14弾圧、旧本部団体の非公認化、文化連盟と中核派系全学連の共闘、菅谷君の飲酒闘争といった一連の出来事を、背景事情を織り交ぜながら、「通史」のかたちで論述したかった。
とりわけ、文化連盟や中核派系全学連が主導する「法大闘争」の陰で、これまであまり光があたってこなかった、ノンセクト系の人々の動きに光をあてようと努めた。今でこそ法大の運動は文連・全学連の専売特許となっている観があるが、私たち以外にも様々な団体・個人が法大の現状を憂い、行動した歴史的事実は忘れるべきではないだろう。
とりわけ、文化連盟や中核派系全学連が主導する「法大闘争」の陰で、これまであまり光があたってこなかった、ノンセクト系の人々の動きに光をあてようと努めた。今でこそ法大の運動は文連・全学連の専売特許となっている観があるが、私たち以外にも様々な団体・個人が法大の現状を憂い、行動した歴史的事実は忘れるべきではないだろう。
なお、本文末尾にも記したけれど、本稿はもともと情況出版の新雑誌「アガルタ」へ掲載を予定し、昨年3月に脱稿したものだ。しかし、同誌が出版見合わせとなったため、今回、本誌「情況」へ掲載される運びとなった。脱稿時期が約1年前であることから、本文中、現在の法大学生運動の情報(運動の展開、逮捕・起訴者数など)を十分に更新できていない点がある。謝して、お断りしておく。
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